NATROMのブログ

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血液型と性格の関係についてぶっちゃけちゃった大学教授

はてなブックマーク経由。ベネッセの「チャレンジ3年生」に掲載された「クラシック音楽で食べ物がおいしくなる!?」という記事を批判していた大学教授が、同時に血液型性格診断に肯定的であったという話。まずは、ベネッセ批判を紹介。


■トンデモ本(大学教授のぶっちゃけ話)


うちの9歳の娘は、ベネッセの「チャレンジ3年生」を愛読している。
幼稚園の時に「しまじろう」にお世話になって、それがいまだに続いているのだ。
あきらかに「付録」が目当てなんだけど、本を読むという習慣をつけさせるために続けている。
 
 
12月号には特集号として「音の不思議大発見」という冊子がついて来たんだけど、ソファに寝そべってだらしなくテレビを見ている父親の私に向かっていろいろと説明してくれた。
 
 
娘:クラシック音楽を聴かすとトマトが甘くなるんだよ。
 
父:ウソや。
 
娘:牛にクラシック音楽を聴かすと牛乳がおいしくなるんだよ。
 
父:ウソや。
 
娘:クラシック音楽を聴かすとニワトリがうむタマゴの数がふえるんだよ。
 
父:ウソや。
 
娘:ここに書いてあるよ。
 
父:あんな〜、もしホンマやったら、トマト栽培農家はみんな畑にクラシック流してるはずやし、牧場でも、養鶏場でもそうや。
そんなん見たことも聞いたこともないやろ。
 
それに、証拠はあるか?理論的に説明できるか?
でけへんやろ。
 
娘:う〜ん、そうだね。


本に書かれていることでも、必ずしも正しいわけではないことを教えるのは大事なことだ*1。それはそれとして、「大学教授のぶっちゃけ話」には、血液型と性格の関連についても書かれている。こんな具合。



とにかく、A型の悪いところをあげると、根に持つ、ガンコ、創造性に欠ける、チャレンジしない、ということで、そういえばそうだなあ、と管理人もまわりのA型をみて納得した。
 
社会を変革したり、部下を引っ張っていく政治家や企業の社長には、OやBが向いてるようで、A型はその補佐役だ。

(中略)

倉田さんにこのような飲食店の経営は、何型がいいんですかねと聞いたら「O型」と即答された。
近藤さんが席に挨拶に来られた時に血液型を聞いたら「O型」ということで一同、納得。
お店を手伝っておられる奥様がB型ということで、これはベストカップルで、しかも副料理長の女性の方がA型でこまやかに気を配られると言うことも加わり、このお店繁盛の秘訣がここにありと一同うなずいた。
(血液型談義 URL:http://junjikido.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_8970.html


有機EL以外にも血液型の話になって、B型は我が道を行くので、なかなかつきあいにくいとか、O型は親分肌だとか、A型は気が利くとか、なんだかんだ言ってたら、でも一番問題なのは二重人格のAB型だと声が上がった。
 
AB型は、沈着冷静かつ発想豊かな天才型と信じる管理人は、ここで反撃しようと思ったけど、感情的な相手に対しては理論が通用しないことをよく知っているので、ニコニコして太っ腹なところを見せた。
(血液型 URL:http://junjikido.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_c828.html


仕事の話はほとんどなくて、組織における役割分担の際に血液型は参考になるとの意見が出され、盛り上がった。
 
他の血液型は忘れたけど、AB型は、頭が切れて、しかも切り替えが速くて失敗してもへこたれず、思い込んだら一直線、協調性も高くて、人からも愛され、ブレークスルーを生み出すのは常にこのタイプとか。
天才型と呼ばれているらしい。
(AB型 URL:http://junjikido.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/ab_7e11.html



きのうから人を見ては血液型を想像している管理人、こうやってタバコを吸い続けるガンコでひとの言うことを聞かず意志の弱い中毒患者達は圧倒的にA型が多いんだろうなあと勝手に判断している。
(分煙 URL:http://junjikido.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_09e1.html



しかも、血液型が管理人と同じくAB型で、彼が学生時代に起業した際の仲間10人のうち9割が結果的にAB型だったと聞き、やはりこの血液型というのは人の考えつかないことを思いつき、人の目を気にせずに実行するタイプだなあということで、これまた意見が一致した。
(出藍の誉れ URL:http://junjikido.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-3b77.html


ウソや。あんな〜、もしホンマやったら、営利企業ははみんな血液型を人事に利用しているはずやし、論文かて書かれているはずや。そんなん見たことも聞いたこともないやろ。それに、証拠はあるか?理論的に説明できるか?でけへんやろ。

冗談は置いといて、血液型の人事利用も論文も探せは無いことはない。ならば、クラシック音楽を利用している農家だってあるだろうし、論文か学会報告があっても不思議ではない。おそらく、「クラシック音楽でトマトが甘くなったり、牛乳がおいしくなったりした」ように見える現象自体はあるのだろう。「企業家にAB型が多い」ように見えるという現象自体があってもおかしくないように。そういった現象が、本当にクラシック音楽による効果なのか、十分に証明されていないというだけで。味の違いは思い込みによるものかもしれないし、クラシック音楽ではなく単に振動が何らかの効果を及ぼしたのかもしれない。実験方法の工夫でこうした要因を取り除き、クラシック音楽の効果を測定することは可能と思われるが、そのような厳密な実験が行われているかどうかは私は知らない。厳密な実験なしにクラシック音楽の効果が科学的に証明されたという宣伝がなされていたとしたらニセ科学といってもよいだろうが、ベネッセの「チャレンジ3年生」に掲載された記事はニセ科学とまでは言えないと思う。

血液型と性格については「厳密な実験」に相当するものは既に行われており、少なくとも「大学教授」が体感しているほどの強い関係は存在しないと断言できるレベルにある。クラシック音楽の農業利用については懐疑的に見ることのできる人であっても、体感があると判断を誤ることがあるというのが、教訓になるだろう。自省もこめて。


*1:ここで挙げられているクラシック音楽の効果については、私は懐疑的だが、ありえないことではないと考える。「水からの伝言」とは同列には置けない。