NATROMのブログ

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カインの妻はどこから来たか?

■人類誕生の謎が解決してしまった? (らばQ)で、進化論と創造論の謎や矛盾を解決したというネタをやっていた。詳細はリンク先を参照していただくとして、ここでは「創造論の謎」について述べる。「らばQ」では、アダムとイヴの息子であるカインおよびセツの妻について、「神が創ったのはアダムとイブだけで、どこからともなくやってきた女性は謎のままなのです」としている。こうしてネタになっていることからも分かるように、この「謎」はポピュラーではあるが、実は解決済みである。少なくとも若い地球の創造論者にとっては。「聖書から生まれた先端科学 創造論の世界」、久保有政著、徳間書店より引用しよう。



 聖書に反対する人々は、しばしば聖書の矛盾をつこうとして、よく「カインの妻は誰か」ということを問う。カインは弟アベルを殺してしまった。そののち聖書は、
「さて、カインは、その妻を知った」(創世記四・一七)
と記している。しかし当時、人類はアダムとエバとカインの三人だけだったはずだ。だからカインが「妻を知った」というのは、聖書の矛盾ではないかという主張である。
 しかし、これは矛盾でも何でもない。聖書は、アダムは、セツを生んでのちも多くの「息子、娘たちを生」(創世記五・四)んだと記している。つまりカインは、自分の妹(あるいは姪)が生まれ、彼女が成長したのち、彼女と結婚したのである。聖書によれば大洪水以前の人々は非常に長命で、何世代もあとの子孫を見たのである。(P228)


カインは妹萌えだった。と言っても、母親以外の女性は妹か姪しかいなかったわけで、選択の余地はなかったのだが。著者の久保有政氏は、単に聖書をそのように解釈しているというだけではなく、それが科学的事実であると主張していることに注意。さて、そのような近親結婚(久保氏によれば近親相姦ではなく近親結婚であったとのこと)は現在はタブーであるが、当時はそうでなかったとのこと。



 遺伝子というものは、すべて二つが一組になっている。そして子は、父親から遺伝子を一つ、母親から遺伝子を一つもらう。たとえそれらの遺伝子のどこかにエラーがあっても、もう一方の遺伝子の同じ部分が完全なら、子供に障害は起きない。完全な遺伝子がエラーを補うからである。
 しかし、父親と母親が近親の場合、両方の遺伝子の同じ部分にエラーがある可能性が高くなる。もし同じ部分にエラーがあると、その子供は障害を持つ。だから今日、近親結婚は避けるべきとされているのである。
 けれども人類の開始期において、アダムとエバの遺伝子は二人とも完全だった。当時はまだ遺伝子エラーが蓄積されていなかったので、近親結婚も何ら支障がなかったのである。(P229)


当時は劣性遺伝病はなかったら、近親結婚OKであったと、そういうわけ。ちなみに久保氏によると、ノアの洪水以前には地球を覆うように水蒸気層*1があって、有害な宇宙線をカットしていたのだそうだ。そのためノアの洪水以前の人たちは長寿であったと。繰り返すが、久保氏はこれらの主張を科学的だと言っている。最近はインテリジェント・デザイン説のほうが主力であり、こういう若い地球の創造論の勢いがなくて少し寂しい感がある。


*1:水蒸気ではなく、液体の水が「地球の磁場に捉えられて超低温超伝導の状態で連続な安定球面を形成して」いたという説もある