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半数の国民「人類は神が創造した」と考える

■米国:半数の国民「人類は神が創造した」と考える*1(毎日新聞)


 米国人の半数近くは神が人類を創造したと考えている−−。米誌ニューズウィークは3月31日、人類の進化に関する米国人の考え方についての世論調査結果を発表した。
 それによると、神が人類を創造したとみなす人は48%。人類は長年かけて進化し、この過程で神の役割はなかったと考える人は13%で、進化の過程を神が導いたと考える人は30%だった。
 また91%が神を信じ、信仰する宗教は全体の82%がキリスト教で、そのほかの宗教の信者は5%だった。


科学大国のアメリカ合衆国でこんな結果かと意外に思われた方もいたようだが、実は恒例の調査であり、結果もかわりばえしない。「生物科学」の2004年10月号で「進化と創造主義」の特集があったのだが、鵜浦裕(進化論を拒む人々―現代カリフォルニアの創造論運動の著者)による「創造論運動の時期区分、戦略、人口統計、要因」からギャラップ調査の結果を引用する。



今回の結果も、「進化の過程を神が導いた」派がやや少ないぐらいで、過去25年間の調査結果とほぼ同じである。もしかしたら質問の仕方で出た差かもしれない(参考:■世論調査の選択肢による差を見てみる(忘却からの帰還))。日本での同様の調査があれば結果を知りたいと思う。血液型と性格の関連を信じている人の割合は変化しているのだろうか。まあ、そうそう変化はしないという気がする。

■痛いニュースとして取り上げられていた。反応は、「アホが91%もいるのか」「一神教はキチガイ狂信者」という、神を信じていることすら馬鹿にするものから、「進化論を宗教のように信じてるお前らもアーフォ!」という進化論に否定的なものまである。

言うまでもないが、生物が進化してきたという学説は科学的にきわめて確かなもので、進化論が宗教だという意見は完全な誤り。進化生物学の基本すら知らない馬鹿のたわごとである*2。一方、神の存在を信じることを狂信扱いするのも行き過ぎであろう。お前は神が存在しないことを証明したんか。神様だろうとFSMだろうと火星の周りを飛ぶ見えないティーポットだろうと、非存在を証明できないのなら、誰かがそれを信じることは自由だろう。神様の存在を信じる者を笑うお前は、証明されたものしか信じないのか?

神様を信じようが、1万年前の創造を信じようが、証明可能なものと証明不可能なものを区別できていればよいのである。


*1:URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20070402k0000m030009000c.html

*2:科学も宗教であるという意見ならそれはそれでありかもしれないが