NATROMのブログ

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遺伝情報を含まないDNA型情報

■容疑者DNAの登録開始 9月から、犯罪捜査に限定(産経新聞)


 警察庁は18日、容疑者から採取した血液などを鑑定して得たDNA型情報について9月1日から登録を開始し、データベースの運用を始めることを決めた。犯罪現場に残された毛髪や体液などの資料のDNA型情報は既に昨年12月から登録されており、余罪解明など犯罪捜査に大きな“武器”となりそうだ。
 国家公安委員会は同日、運用方法を定めた「DNA型記録取扱規則」を承認。「犯罪捜査に資すること」に目的を限定し、遺伝情報を含む部分は利用しないことを明確にするため、鑑定するDNAの部位を明記した。
 警察庁は運用状況を専門家による有識者会議に報告。会議は、どのような犯罪の容疑者を登録対象とするかや、運用に関する法整備の必要性などを検討する。DNAは「究極の個人情報」だけに、データベースの厳格な運用とともに、登録拡充には慎重な議論を求める声が強まりそうだ。

こうしたデータベースについては、犯罪抑制と人権保護のトレードオフにあることはすでに述べた。犯罪者のみならず、容疑者のDNA型情報をも登録するってのは、もっと論議を呼んでよさそうなものなのだが、それほど話題にはなっていない様子。それはともかくとして、私が注目したのは、「遺伝情報を含む部分は利用しない」という部分。遺伝情報を含まないDNA型情報っていったいどういうことよ?

朝日新聞の記事では、「病気や遺伝情報を含む部分は登録せず」とあることより推測するに、「遺伝情報を含む部分」とは、表現型(病気も表現型の一つ)と関係する部分という意味で使用されていると思われる。普通は、表現型とは無関係な部分だって、遺伝情報に含む。ていうか、表現型と無関係な部分のほうが多いくらいだ。表現型と無関係だからこそ、突然変異が淘汰されずに残り、遺伝的に多型となりやすい。そういう部分こそが親子鑑定や犯罪捜査に使用しやすい。いったいなんでまた、表現型と無関係であれば「遺伝情報を含まない」という誤解が生じたのであろうか。