NATROMのブログ

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C型肝炎は被爆が原因?

■原爆症認定:C型肝炎は被爆が原因 東京高裁も1審支持(毎日新聞)


長崎市で被爆した故・東(あずま)数男さんが「C型肝炎になったのは被爆が原因」として、被爆者援護法に基づく原爆症と認定しなかった厚生労働相の処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が29日、東京高裁であった。岩井俊裁判長は、東さん側勝訴の1審・東京地裁判決(昨年4月)を支持し、処分取り消しを命じた。
原爆症認定を巡っては03年以降、全国で集団訴訟が相次いでおり、原告は約170人。C型肝炎の被害を訴える原告も少なくなく、今回の高裁判断は影響を与えそうだ。
東さんが肝機能障害で入退院を繰り返すようになったのは81年以降のため、被爆との因果関係が争点になった。判決は「放射線の影響は科学的に詳細が解明されておらず、発症の医学的しくみを証明するのは困難。被爆状況や発症に至る経緯などを総合的に考慮すべきだ」と指摘。そのうえで▽爆心地から近い地点で被爆した▽障害が急性で、かつ重い−−ことなどから因果関係を認めた。国が被ばく線量の推定値を認定基準としていることについては「機械的に適用するのは相当でない」と指摘し、被ばく線量が少ないとする国側主張を退けた。
ちりんさんも指摘しているように、C型肝炎はC型肝炎ウイルスの感染が原因であるからして、「C型肝炎は被爆が原因」というのはおかしいように感じられる。「C型肝炎 被爆」で検索してみたら、まあ予想通りというか、被爆が原因だったかどうかではなく(原因はウイルスに決まっている)、悪化要因であったかどうかが争われているようだ。朝日新聞による第一審を報じた記事を発見した。毎日新聞の不正確な記事より、争点が明らかで正確な記載がなされている。


■東京反核医師の会


東京地裁、原爆症不認定取り消す判決 被爆と病状に関係(朝日新聞2004年3月31日夕刊)
 学徒動員中の長崎市で被爆し、C型肝炎になった東京都町田市の無職東数男さん(75)が、原爆症と認定されなかったのは不当だとして、国を相手に不認定処分の取り消しを求めた訴訟の判決が31日、東京地裁であった。市村陽典裁判長は「爆心地近くで多大の放射線に被爆したことが、C型肝炎の発症・進行の原因になった」と被爆と病状の因果関係を認めて、不認定処分を取り消した。
 東さんは16歳のとき、爆心地から約1.3キロの長崎市内の兵器工場で被爆した。2週間後から、脱毛や下痢などを発症。その後、肝機能障害を患い、94年に原爆症認定を申請したが、「C型肝炎に基づくものだ」と却下され、99年に提訴した。提訴後の00年には別の病気(肺がん)を理由に原爆症認定されている。
 判決は、被爆がC型肝炎の発症や進行を促進した可能性を指摘した論文があることや、被爆の状況、症状などを全体的、総合的に判断した結果、被爆と病状の因果関係を認めた。

被爆していない人でもC型肝炎が発症したり進行したりすることはよくある。しかし、被爆がC型肝炎の発症や進行を促進した可能性は否定できないであろう。コストとの兼ね合いもあるのだろうが、こうした救済措置は、救済されるべき人が網からこぼれるくらいなら、救済されるべきでない人が少々入ろうともこぼれおちがないようにしたほうがよいように私は思う。