NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

地域医療続き

地域医療の続き。9月2日の記事。

●存続危ぶまれた泉崎村立病院 新院長が診療開始(福島中央テレビ 過去のニュース)


*浜粼院長インタビュー
「いつかは福島でへき地医療、ここはへき地ではないですが、地域医療を最後は、もう50歳になりましたし、最後役立てたらいいかなと常々思ってたので」
 浜崎院長の専門は内科と整形外科で、先週から患者の診療にあたっています。
*患者インタビュー
「急なケガでちょうど先生いたから、診てもらって良かった。この病院があるから、村民の人もいいんじゃないですか」
「(地元に病院がないと)白河か矢吹(の病院)にということになって足が問題になっちゃうんですよ。我々は一安心ということだね」
 浜粼院長は、「地域の人がちょっとでも幸せになるような病院を目指したい」と意気込んでいます。
「地域の人がちょっとでも幸せになるような病院を目指したい」が20日あまりで「もう限界。勘弁してくれ」になってしまった。「当直は週1回まで」だったはずが、「週5回をつけられた」。村幹部は「すべて納得済みで来てもらったと思っていた」と発言しているが、週5回当直も納得済みだったのだろうか?忙しさ自慢の医師はたくさんいるだろうが、ずううっと続く週5回の当直を経験した人いますか?確かに、「1週間の泊り込み」ぐらいはそう珍しくない。でもそれは、若くて元気な研修医時代の話。しかも、(良くなるにせよ悪くなるにせよ)患者さんの状態の見通しがつくまでの間だけ。それに「私の患者」を「私の勉強にもなる」ために診るのと、バイト医師でもできることを予算か人材不足で「させられて」いるのとではモチベーションだって違う。

泉崎村立病院の当直は、確かに状態の悪い患者さんをかかえた泊り込みと比べれば楽だろう。しかし、電話で指示するだけも睡眠は中断される。しかも泉崎村立病院院長の週5回当直はずっと続くのだ。先週も、今週も、来週も、再来週も。いきなり辞めたかのような報道もなされているが、毎日新聞では「勤務態勢の改善を求めたがはねられた」とある。SOSは出ていたのだ。私は、辞めた院長を無責任呼ばわりする気にはとうていなれない。

いったい、院長はどうすればよかったのだろう?「当直は週1回までのはずがなく、週5回はしなければならないだろう」ということを予測できなかったのが甘かったのか?通常業務と週5回当直と休日の呼び出しに耐えながら、勤務態勢の改善を粘り強く求めなかったのが悪かったのか?後任の医師が見つかるまで(いったいいつになるやら)、辞職を保留すべきだったのだろうか?超人にしかできないことができなかっただけではないか。