NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

難病指定について

慢性活動性EBウイルス感染症で亡くなった声優さんの記事についたid:ko_kanagawa さんのブックマークコメント( http://b.hatena.ne.jp/ko_kanagawa/20160203#bookmark-277959794 )へのお返事です。

難病の制度は最近変わりました。制度が変わる以前は、指定された難病は数十種類とかそれぐらいです。以前に聞いた話だと、難病に指定されるためには、患者数が多すぎても少なすぎてもだめ、とのことです。

難病に指定されると医療費の自己負担額が減ります。自己負担額が少ないということはその分を補てんしなければならないわけで、患者数の多い病気を難病指定すると財源が足りなくなります。一方で、患者数が少ないとそのぶん患者団体の政治力が小さく、またその病気を専門とする医師の数も少ないわけで、指定されにくい、とのことでした。

新しい制度では指定難病の数は増えたけれども自己負担額の上限も増えたりして、それはそれで問題があります。誰もかれも負担なく手厚い対応を、というのは難しいですが、制度に改善の余地は常にあり続けるでしょう。

私を含めて反省しなけばならないのは、医師は社会制度について関心が乏しい、ということです。患者さんにどのような検査を行い、どのような治療が最適かについては勉強しますし、知らないとしても知る手段を持っています。一方で、患者さんに最適な社会制度は何か、という点が後回しになりがちです。正直、複雑怪奇で手に負えません。病院にはソーシャルワーカーといった社会制度に詳しい方もいますが、満足いく状況とは言えません。

ともかく、慢性活動性EBウイルス感染症については、短期的には難病指定を取るのが患者さんの救済につながります。ただ、指定されていない難病というのは山のようにたくさんあります。ほんとうにたくさん。中には医学的コンセンサスが得られそうにないものもあります。慢性活動性EBウイルス感染症が難病指定を取っても、ほかの難病の方の救済にはなりません。次々と難病指定をしていっても、きりがありません。病名ではなく、病状で救済・助成を受けるような制度がいいのかもしれません。