NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

消費生活センターのリーフレットにクマー登場

本日の朝日新聞の地方面より。




2009年11月10日の朝日新聞朝刊より引用

記事によれば、『同センターでは啓発に使える予算が限られており、新しいキャラクターを作ると当たりはずれが大きいため、安く若者にアピールする方法はないかと若い職員にアンケートをとった。その結果、誕生したのが、おでこに「消」の文字が入った「消費生活グマ」だ』とのこと。確かに安くあがるものの、果たして若者にアピールするかどうか。一部の層にはアピールするかもしれないが。

「トラブルに注意してクマ」とか言いつつお前釣られとるやないか、と思ったが、元のリーフレットには、「みんな,こんなふうに釣られないように,これを読んでほしいクマ。」とあった。




福岡市消費生活センターのサイトの啓発リーフレットから引用



ちなみに悪質商法編はこんな感じ。




福岡市消費生活センターのサイトの啓発リーフレットから引用


リーフレットには、

※ 消費生活グマは,若者の消費者被害の未然防止のため,インターネット掲示板のAA(アスキーアート=文字の組み合わせによる絵)を改変して作成したものであり,当センターが,そのデザインについて何ら権利を主張するものではありません。オリジナルの作者の方には,深く感謝いたします。

ともあった。


リーフレットは、■福岡市消費生活センターのサイトから見ることができる。見に行ったら釣られたことになりそうな気がするが。同ページにある「高齢者を悪質商法被害から守る見守りのツボ」もなかなか味わい深い。




福岡市消費生活センターのサイトの啓発リーフレットから引用

韓国人と九州人の遺伝子が七十%も一致するという件について

九州大学韓国研究センター客員教授の朴珍道教授の発言。


■外国からみえた方々による九州大学訪問記強調は引用者による)


福岡は自転車さえあれば大体三十分で市内のどこへでも行けるのでとても幸せです。しかも九州の人々には何となく親しみを感じます。以前に韓国人と九州人の遺伝子(DNA)がなんと七十%も一致するという話を聞いてなるほどと思ったこともありました。ソウルから福岡までは飛行機で一時間しかかからなくて東京より近いですし、釜山からは船でも三時間かかりません。


ヒトとチンパンジーのDNAは98%とか99%とか一致すると言われている。系統的に離れた種ほど一致率は低くなり、ウニが70%ぐらいになるそうだ。これをもって「人間とサルよりも低くないか?」「朝鮮人はウニ並み」と笑う声もあるが、塩基配列の単純比較では韓国人と九州人はほぼ100%一致するのは分かりきっているので、別の物差しを使って「七十%も一致する」と言っていることは明らかだ。どのような物差しで「七十%も一致」という数字が出てきたのか調べてみた。ヒト集団間を比較するなら、塩基配列が一致している部分はどうでもよい。多型(差異)のある部分が重要だ。そこで、「SNPs(一塩基多型) 韓国人 九州人」でGoogle検索してみたが、よい結果は得られなかった。「SNPs 韓国人 日本人」では以下のページがヒットした。


■韓国人、遺伝的に日本人と近い(中央日報)


 これまで非常によく似た民族と推定されてきた韓国人、日本人、中国人の間にも、微細な遺伝的差が存在することが確認された。 特に、韓国人は遺伝的に、中国人よりも日本人に近いことが明らかになった。
 疾病管理本部国立保健研究院のチョ・インホ博士研究チームは3日、「世界最大の遺伝体研究協議体である米TSC研究チームと共同で遺伝子塩基配列について大規模な研究を行った結果、こうした事実を確認した」とし、「今後、疾病遺伝子の発掘や新薬研究開発などで重要な基礎資料になるだろう」と明らかにした。
 今回の研究で、韓国人は黒人との遺伝的差が18.8%、白人とは16.1%だった半面、中国人(8.4%)、日本人(5.9%)との差は比較的少ないことが分かった。 日本人と中国人の間の遺伝的差は8.6%だった。 韓国人と日本人の遺伝子が最も似ているということだ。


別にありえない結果ではないが、さすがにこれをそのまま信じるわけにはいかないので、原著論文にあたってみた。『「高密度人間遺伝体の単一塩基多形地図」というタイトルで、権威ある国際学術誌「ジェノミクス」8月号に掲載された』というヒントで簡単に見つかった。Miller et.al, High-density single-nucleotide polymorphism maps of the human genome, Genomics 86(2005), Pages 117-126。論文タイトルの和訳は「ヒトゲノムにおける高密度一塩基多型マップ」のほうがわかりやすいか。論文の主題は、「今後の遺伝学研究に使えるSNPsマップを作りました」で、韓国人、中国人、日本人集団の遺伝的距離の話はついで。Differences between groups (%)という表があるので引用する。





Miller et.al(2005)より引用


韓国人と日本人の遺伝的差"divergence"は5.9%。もちろん、物差しが違うので、ヒト=チンパンジー間のDNAの一致率と比較はできない。遺伝的差"divergence"は、集団間の対立遺伝子頻度の差から求めたようだ。たとえば、ある遺伝子座においてCもしくはTという対立遺伝子があるとする。日本人集団でCの頻度が30%、韓国人集団で35%、中国人集団で50%とすると、遺伝子頻度の差は、日本人‐韓国人間で5%、韓国人‐中国人間で15%、日本人‐中国人間で20%というわけ。何千個ものSNPsを調べてその平均をとったら韓国人-日本人間で5.9%であったと、そういうわけであろう*1。「韓国人と日本人の遺伝的差が5.9%としても、韓国人と九州人の遺伝子がなんと70%も一致という話と違うじゃないか」と読者はお思いだろう。ただ、この5.9%という数字は、今回使用した遺伝マーカーを使った上での数字であって、異なる遺伝マーカーのセットを使えば異なる数字が出る。大事なのは、5.9%という数字そのものではなく、相対的な数字の大きさである。論文では、アジア人集団‐アフリカ系アメリカ人集団間との比較の数字を出している*2



For autosomes, the divergence between Chinese and Japanese is 46% of that between Asians and African Americans, and the divergence Japanese and Koreans is 31% of that between Asians and African Americans (Table 2).


アジア人集団‐アフリカ系アメリカ人集団間の距離が100%としたら、中国人‐日本人集団間の距離は46%、日本人‐韓国人間の距離は31%となる。この数字は、異なる遺伝マーカーのセットを使ってもそれほど変わらないはずだ。朴珍道教授の「韓国人と九州人の遺伝子(DNA)が七十%も一致」の発言は、"divergence Japanese and Koreans is 31%"(日本人と韓国人の差異は31%)が、マスコミ報道および朴珍道教授の解釈によって「70%が一致」となったのではないか。推測に過ぎないが、私が調べた限りでは、「九州人」と韓国人を比較した研究は見つからなかったし、そもそも九州人も日本人も遺伝的にはほぼ同じであろう。朴珍道教授の専門は経済学で遺伝学ではない。記憶違いと九州へのリップサービスによって間違えたのだろうと思う。


*1:あくまで「私はそう読んだ」ということなので、詳細が知りたい人は原著論文を読んでください。そして私の解釈が間違っていたら教えてください。

*2:アフリカ系アメリカ人集団といっても多様な集団の集まりであるので、大雑把に言っての話。厳密にとか言い始めたら、日本人だって単一の民族集団ではない

九大でごめんなさい

「ししゃ科も会」+水からの伝言を、apjさん@水商売ウォッチングが捕捉した。


■また九大か…… (事象の地平線)


日本物理学会2006年秋季大会(9月20日(水)―23日(土)、奈良女子大学)で以下のような発表があるらしい。

言葉が水の氷結状態と水中元素濃度に及ぼす影響
(九大院工)高尾征治・○川添淳一・(アイエイチエム)江本勝・
(ホワイトマックス)増本勝久・(IHMテック)里中耕也・(サロンドジャン)石田静子
<申し込み要旨>江本は独自の水の氷結技術を開発し、水の氷結状態が言葉の影響を受けて多様に変化することを示した。ここでは、それに対応して水中に微量含まれる元素濃度がどのように変わるかを調べてみた。その結果、「ありがとう」、「ばかやろう」の日本語だけでなく「Thank you」,「You fool」の英語でもカルシウム元素が同じパターンで変化することがわかった。
「ししゃ科も会」とは、九州大学助手の高尾征治氏が代表をしている、なんだかよく分からない会。■ししゃ科も会ホームページ*1によれば、「自然観・社会観を科学的に模索する会」の略称であるらしい。「また九大か」と言われているのは、水商売の雄、活性水素説の白畑教授のおられるのが九大だからだ。幻影随想でも取り上げられた。


■江本氏的には、祈りは元素変換をも可能とするらしい(幻影随想)


九大の恥だ…。恥をついでに言えば、歯は中枢だったでトンデモ本大賞をとった村津和正先生は九州大学歯学部卒業だ。こういうのを許容する九大は本当に懐が広いですね、と誰か言え。でもまあ、どこの大学だって、探せばトンデモさんの2人や3人はいるはず。とくに九大に多いわけじゃないよ、きっと。

ししゃ科も会は、過去に進化論と創造論の掲示板で話題になったことがある。当時私は大学院生であり、キャンパスも近いし怖いもの見たさで「ししゃ科も会」ゼミに行きたくなったとか言っていたのだが、結局、ドアの前までは行っておきながら止めた。ちなみにこのとき書籍部で買ったのが、こないだ紹介した「ソロモンの指環」の文庫版なのだ。「ソロモンの指環」を見るたびに、ししゃ科も会を思い出すという嫌な連想が身についてしまった。



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■竹炭結界

*1:URL:http://www1.odn.ne.jp/shishakamo/under-index.htm