NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

「花粉を水に変えるマスク」の臨床試験の結果は早く公表されるべき

一年前に話題になった「花粉を水に変えるマスク」 「花粉を水に変えるマスク」ってありますよね。1年前(2018年春)に活発な議論がなされました。インターネット上では山形大学理学部物質生命化学科天羽研究室の以下のページがまとまっています。 ■花粉を水…

「副腎疲労」は根拠が不明確な疾患である

PATM、慢性ライム病、そして副腎疲労 『RikaTan(理科の探検)』誌2019年4月号に「根拠が不明確な疾患と代替医療 PATM(他人にアレルギー症状を起こすとされる疾患)を中心に」という題名で寄稿した。RikaTan (理科の探検) 2019年4月号出版社/メーカー: 文 …

軽症であればインフルエンザが心配だからと病院に行くのはおすすめしない

インフルエンザは自然に治る疾患で、抗インフルエンザ薬の効果は有症状期間を1日間ほど縮める効果である。感染リスクや待ち時間コストを考慮すると、症状が軽いのにインフルエンザが心配だからと病院を受診するのは割にあわないかもしれない。

紛らわしい「ニセ医学」~免疫療法と幹細胞療法

2018年の医学関連ニュースといえば、なんといっても本庶佑先生のノーベル賞受賞であろう。がん細胞が免疫から逃れる仕組みを明らかにした。また、免疫チェックポイント阻害剤としてすでに臨床応用もされている。一番名前が知られているのは「オプジーボ」(…

『ワールドトリガー』再開を祝って福岡市の玄界島の魅力を紹介します

週刊少年ジャンプにおいて、長らく休載されていた『ワールドトリガー』の連載が再開しました*1。ワールドトリガー 19 (ジャンプコミックス)作者: 葦原大介出版社/メーカー: 集英社発売日: 2018/12/04メディア: コミックこの商品を含むブログを見る『ワールド…

新装版『「ニセ医学」に騙されないために』、発売です。

以前から告知を行っていましたが、新装版『「ニセ医学」に騙されないために』が本日(11月29日)発売になりました。新装版についても、サイエンス・ライターの片瀬久美子さんが解説文を書いてくださいました。片瀬さんと出版社のご厚意によりウェブ上でも読…

はてなブログに移行しました。そして新装版『「ニセ医学」に騙されないために』が出ます!

はてなブログに移行しました。そして新装版『「ニセ医学」に騙されないために』が出ます!著者名はNATROM改め名取宏(なとり・ひろむ)です。

「生存率の上昇」と「死亡率の低下」は違います

■医師国家試験を解いてみよう。「がん検診の有効性を示す根拠はどれ?にて、『Wikipediaの「がん検診」にはbが正解であると書いてあるが…』とのブックマークコメントをenvsさんからいただきました。こうして疑問点について教えていただけることをたいへんに…

医師国家試験を解いてみよう。「がん検診の有効性を示す根拠はどれ?」

がん検診にまつわる誤解は根深く、医師でもけっこう間違えている人がいます。ただ、医師国家試験にがん検診が有効である根拠を問う問題が出題され、若い世代の医師はがん検診の疫学をより正確に理解しているものと思われます。厚生労働省のサイトに過去問が…

他人にアレルギー症状を起こさせる疾患「PATM(パトム)」は実在するか?

PATM(パトム)についての医学論文はほとんど存在しない 「PATM(パトム, People Allergic To Me)」と呼ばれる病気がある。本人には必ずしも症状はないが周囲の人に咳、くしゃみ、鼻水といったアレルギー症状を起こさせるとされる。典型的には、自分が電車…

臨床環境医の利益相反

たとえばの話、「日本高血圧学会」の学会窓口を、降圧薬を売っている製薬会社がやっていたら、いくらなんでもまずいと思うよね。少なくとも現在の常識から言えば論外。何が問題かというと、たとえば「この降圧薬の効果はそれほどでもなく、むしろ副作用のほ…

「子宮頸がんで人は殆ど死なない」のか?

喫煙の害を過小評価しようとしているのか、「肺がんで死ぬのは10万人に80人、約0.08%である。タバコが肺がん死を数倍増やすとしてもたかがしれている」といった主張を散見する。10万人に80人というのはおそらく、日本人男性の肺がん租死亡率からきている。…

HPVワクチンの問題はトロッコ問題か?

「ワクチンで人が死んではいけない」といった趣旨のツイートがブックマークを集めている。そのいくつかが、HPVワクチンとトロッコ問題の類似性について指摘している。トロッコ問題とは、暴走したトロッコがそのままだと5人ひき殺すことろが、ポイントを切り…

日本語で書かれた教科書も理解できない大学教員

2017年11月に九州大学馬出キャンパスで行われた「福島小児甲状腺がん多発問題」に関する科学技術社会論学会の自由集会*1に参加させていただいた。集会に先立って、富山大学の林衛氏とやり取りする機会があった*2。林衛氏は、LDLコレステロールが動脈硬化性心…

HPVワクチンの「重篤な有害事象」7%は高すぎるか?

医療情報を吟味し伝える活動を行うコクランがHPVワクチンのレビューを発表した。各新聞社が伝え、また、コクランの日本支部による日本語訳も読める。 ■英民間組織:HPVワクチン「深刻な副反応の証拠なし」 - 毎日新聞 ■子宮頸がんワクチン、「前がん病変…

『健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方』

■健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方 朽木 誠一郎 (著) 私は「WELQ問題」にぜんぜん気づいていなかった。WELQ問題とは、「一部上場企業のディー・エヌ・エーが、グーグルなどの検索エンジンを攻略し、ウソや不正確な情報を…

HPVワクチンが自己免疫疾患を増やすという証拠はない

全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局長・日野市議会議員の池田としえ氏が、「HPVVの副反応は、1000人に1人とされているが、健康な若い女性13236人の治験の結果、ガーダシル9の自己免疫疾患系副反応の発生率は、2.3%であることが明らかになっている(表)…

SNSのせいで落語を楽しめない

私は桂春蝶師匠(3代目)の落語が好きだ。上手い下手、良し悪しを判断できるほど落語を聴きこんでいないので、この記事で語るのは私の主観による好き嫌いの話である。初めて聴いた春蝶師匠の噺は、私の記憶が確かなら、『看板のピン』である。落語は同じ演目…

インフルエンザ蔓延予防のための受診は必要か?

「高リスクグループや重症者でなければ受診は必要ないというけれども、インフルエンザだったら他人に感染させないために解熱してから2日間は自宅での安静が必要であるのだから、きちんと受診して診断してもらう必要があるのではないか」という意見を聞く。結…

インフルエンザで「早めの受診」が必要なのはどんな人?

インフルエンザが大流行である。Yahoo!ニュースに■インフルエンザで「早めの受診」は間違いです! (新潮社 フォーサイト)という記事が載った。コメント欄やブックマークは賛否両論だ。読んでみたところ、いいことも書いてあれば、首肯できないことも書いて…

イングランドにおいてHPVワクチン接種世代の子宮頸がんは増加していない

全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局長・日野市議会議員の池田としえ氏が、英国においてHPVワクチン接種世代の子宮頸がんが確実に増加しているとツイートした。【拡散希望・ワクチン接種後癌の増加か?大問題!ワクチン接種したからこそ、検診をこまめ…

加熱式たばこ可は完全禁煙ではない

以前、■食べログで完全禁煙の店を検索する方法を紹介したが、今後はこの方法は実用的でなくなるかもしれない。食べログが『「プルーム・テック」を楽しめるお店特集』を行っている*1。「プルーム・テック」とは加熱式のたばこ用デバイスである。現状の法律下…

日本の成人でも甲状腺がんの過剰診断は起こっている

2017年11月26日に、科学技術社会論学会第16回年次研究大会に続けて行われた自由研究集会『データで探究・対論「福島小児甲状腺がん多発問題」』に参加した。念のために言っておくが、私は誘われた側だ*1。sivadさんは「散々ごねて林さんにオープンな議論の場…

過剰診断と「がんもどき」の違い

甲状腺がん検診についての議論を見ていると、過剰診断と近藤誠氏が提唱する「がんもどき」の区別がつきにくいようである。たしかに過剰診断と「がんもどき」は似ている。しかしながら、その背景の考え方は大きく異なる。違いを表にまとめてみた。 標準的な見…

ニセ医学に騙されているのに境界線上の事例を検討できようか

コレステロールは心筋梗塞などの動脈硬化性の心疾患の原因だ。より正確には、コレステロールの中でも、いわゆる「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールが原因である。また、スタチン(商品名ではメバロチンやリピトールなど)をはじめとしたコレステロールを低…

二重盲検法でオーリングテストの効果を実証したと称する「文献」を読んでみた

オーリングテストはもはや由緒正しいニセ科学と言っていいだろう。指をアルファベットの"O"の字にして指が離れるのに抵抗する力から、薬を選んだり、病気を診断したりできると主張されている。詳細は■『謎解き超科学』のナカイサヤカさんの『「オーリングテ…

乳がん術後の「抗がん剤ストップ」のリスクはどれぐらい?

女優の南果歩さんが、ステージIの乳がんの手術および放射線治療後の抗がん剤をストップしていることを明かしたという報道があった。 ■南果歩「見本にして」抗がん剤ストップ中と明かす (日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース 南はステージ1の乳がんと診断され…

高価な「先端医療検査」の実力は?

研究途上にある医療を高額な対価をとって提供する医療機関がある。記憶に新しい例では■クリニックで行われた臍帯血投与に意味がない理由で紹介した臍帯血投与である。ある種の血液疾患に対する臍帯血投与は標準医療だし、臍帯血由来の幹細胞を利用した再生医…

クリニックで行われた臍帯血投与に意味がない理由

無届けで臍帯血(さいたいけつ)の投与を行ったとして、医師を含む6人が逮捕されるというニュースがあった。 ■さい帯血無届け投与、販売業者や医師ら6人逮捕 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) がんの治療や美容目的で臍帯血の投与が行われていたという…

因果推論の考え方を学ぶ。『「原因と結果」の経済学』

■「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法 中室牧子 (著), 津川友介 (著) 相関関係があるからといって必ずしも因果関係があるとは限らない*1。テレビを長時間見ている子どもほど学力が低いとしても、テレビの視聴が低い学力の原因とは限らな…