NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

HPVワクチンが子宮頸がんを増やすというニセ情報を検証してみた

子宮頸がんの原因の大多数はHPV(ヒトパピローマウイルス)の慢性感染であり*1、HPVワクチンによってHPVの感染を防ぐことで子宮頸がんを予防することが期待できる。もちろんワクチンである以上、100%の安全性は保障できず、頻度はともかくとしてHPVワクチン…

新薬に対する熱狂の弊害

新型コロナウイルス感染症に対する治療薬の評価がぼちぼち出つつある。トランプ大統領が推したことでも注目を集めたヒドロキシクロロキンはもともとは抗マラリア薬で、自己免疫性疾患にも使用されている。安価な経口薬で、使用実績が多く副作用の情報も把握…

新しいニセ医学「新型コロナ否認主義」

標準的な医学的知見を否定する名誉教授と市議会委員 日野市議会委員の池田としえ氏が、2020年6月8日に「新型コロナに迫る!」 *1と称して議会で質問をしたが、その内容に危惧を覚えたのでここで指摘する。端的に言えば、池田としえ氏は、Youtube等で徳島大学…

「擬陽性(疑陽性)」と「偽陽性」は違います

新型コロナウイルス感染症に関連して検査の性能が話題になっています。本当は感染していないのに検査で誤って陽性という結果が得られることを「偽陽性」といいます。英語では"false positive"。この"false positive"を「擬陽性(疑陽性)」と呼ぶことがあり…

「論座」の新型コロナ感染症の記事から学べること

「論座」に新型コロナウイルス感染症を疑う症状を経験したジャーナリスト、佐藤章氏による記事が掲載された。患者さんの視点で気持ちの推移やPCR検査の経験を伝える良い記事である。 ■私はこうしてコロナの抗体を獲得した《前編》保健所は私に言った。「いく…

布マスクはないよりマシなのか?

■「子供のマスクは手作りを」 学校再開に向け文科省が呼びかけ - 毎日新聞という記事が出ていた。文部科学省が手作りマスクの普及を呼びかけたという。ただ、布マスクが新型コロナ感染症の予防に役立つかどうかは、微妙なところである。現時点では明確な結論…

もし家族が肺炎になったら新型コロナの検査を要求するか?

COVID-19(いわゆる新型コロナウイルス感染症)症例が福岡でも出ました。私の外来にも「新型コロナが心配」という患者さんがぼつぼつ受診しています。幸い、私の外来ではいまのところはどなたも肺炎にはなっておらず、現時点では検査は不要だとご説明し、ご…

リキッドバイオプシーの商業化の問題点

『「血液一滴」あるいは「尿一滴」で、がんを早期発見!』という話は以前からたくさんあるが、なかなか実用化されない。こうした、少量の体液からがんを診断する技術を「リキッドバイオプシー」と呼ぶ。現時点では、一定の精度でがんを診断できるリキッドバ…

何も悪いことをしていなくても人々は病気になる

がんを治すことが証明された食事療法は、現時点では存在しない。がんになりにくい食事ならある程度はわかっていて、がんの患者さんについても、基本的にはそうした健康的な食事が推奨されている。詳しくは ■がん体験者の栄養と運動のガイドライン:[国立がん…

血液1滴で13種のがんを同時に検出できる検査ってどうなの?

マイクロRNAによるがん診断技術がニュースに 東芝が「1滴の血液から13種類のがんいずれかの有無を99%の精度で検出できる技術を開発し、2020年から実証試験を始める」というニュースが報道された。血液中のマイクロRNAをマーカーとするもので、研究としては…

HPVワクチンの定期接種は人体実験だったのか?

厚生労働省のリーフレット(平成25年6月版)には「子宮頸がん予防ワクチンは新しいワクチンのため、子宮頸がんそのものを予防する効果は証明されていません」*1との記載があった。子宮頸がんのほとんどはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因で起こる…

「謎水装置」から学ぶニセ医学の手口

「謎水装置」は血中酸化ストレスを減少させると主張されている 「株式会社日本システム企画」が製造販売する、配管内の赤錆を黒錆に変えて赤水を解消する効果があると称する「NMRパイプテクター」という商品がある。福岡市営地下鉄に広告が出ているのを見た…

HPVワクチンをめぐる「ファクトロンダリング」

つくば市議会議員小森谷さやか氏による、ヒトパピローマウイルス(HPV)および子宮頸がんに関する誤った情報が訂正されないままでいる。 HPVワクチンによって恩恵を受ける人の推計は10万人あたり数百人というのがコンセンサス まずはコンセンサスの得られて…

検診で乳がんが発見された人が100人いたとして

問題。 検診で乳がんが発見された人が100人いたとします。この100人の中で、がん検診のおかげで乳がんで死なずに済んだ人は、何人ぐらいでしょうか? がん検診を行えば何かしら治療を要するがんが見つかる。しかし、がんを発見できること自体は、がん検診が…

「血圧が高いと心筋梗塞になりやすい」と、どのような方法でわかったのか?世界中の命を救った研究

『医師が教える 最善の健康法』が、本日、2019年6月24日に発売されます。ブログと書籍の大きな違いとして、書籍は編集者によっても手が入りブラッシュされる点があります。ブログは書きたいことを字数制限を気にせずに書けるという気楽さがある一方、書籍は…

『医師が教える 最善の健康法』の「はじめに」

2019年6月24日発売の『最善の健康法』の「はじめに」を公開いたします。はじめに 昔から長寿は人類の憧れでした。もちろん、ただ長生きするだけではなく、健康でいられることも条件です。かなり多くの方が健康で長生きしたいと願っているのではないでしょう…

新刊『医師が教える 最善の健康法』出ます

『医師が教える 最善の健康法』という本を書きました。内外出版社から2019年6月24日に発売です。いまアマゾンの紹介文を読んだら、「前著『「ニセ医学」に騙されないために』で「ニセ医学」という言葉を世に定着させた内科医が、たくさんの世界的に認められ…

血圧の基準値がどんどん下がるのなぜか?

日本高血圧学会による高血圧治療ガイドラインが5年ぶりに改訂され、合併症のない75歳未満の成人の降圧目標が従来の140/90 mmHg未満から130/80 mmHg未満に引き下げられた。「高血圧は薬で下げるな」「基準値の引き下げは薬を売りたい製薬会社の陰謀だ」といっ…

「花粉を水に変えるマスク」の臨床試験の結果は早く公表されるべき

一年前に話題になった「花粉を水に変えるマスク」 「花粉を水に変えるマスク」ってありますよね。1年前(2018年春)に活発な議論がなされました。インターネット上では山形大学理学部物質生命化学科天羽研究室の以下のページがまとまっています。 ■花粉を水…

「副腎疲労」は根拠が不明確な疾患である

PATM、慢性ライム病、そして副腎疲労 『RikaTan(理科の探検)』誌2019年4月号に「根拠が不明確な疾患と代替医療 PATM(他人にアレルギー症状を起こすとされる疾患)を中心に」という題名で寄稿した。RikaTan (理科の探検) 2019年4月号出版社/メーカー: 文 …

軽症であればインフルエンザが心配だからと病院に行くのはおすすめしない

インフルエンザは自然に治る疾患で、抗インフルエンザ薬の効果は有症状期間を1日間ほど縮める効果である。感染リスクや待ち時間コストを考慮すると、症状が軽いのにインフルエンザが心配だからと病院を受診するのは割にあわないかもしれない。

紛らわしい「ニセ医学」~免疫療法と幹細胞療法

2018年の医学関連ニュースといえば、なんといっても本庶佑先生のノーベル賞受賞であろう。がん細胞が免疫から逃れる仕組みを明らかにした。また、免疫チェックポイント阻害剤としてすでに臨床応用もされている。一番名前が知られているのは「オプジーボ」(…

『ワールドトリガー』再開を祝って福岡市の玄界島の魅力を紹介します

週刊少年ジャンプにおいて、長らく休載されていた『ワールドトリガー』の連載が再開しました*1。ワールドトリガー 19 (ジャンプコミックス)作者: 葦原大介出版社/メーカー: 集英社発売日: 2018/12/04メディア: コミックこの商品を含むブログを見る『ワールド…

新装版『「ニセ医学」に騙されないために』、発売です。

以前から告知を行っていましたが、新装版『「ニセ医学」に騙されないために』が本日(11月29日)発売になりました。新装版についても、サイエンス・ライターの片瀬久美子さんが解説文を書いてくださいました。片瀬さんと出版社のご厚意によりウェブ上でも読…

はてなブログに移行しました。そして新装版『「ニセ医学」に騙されないために』が出ます!

はてなブログに移行しました。そして新装版『「ニセ医学」に騙されないために』が出ます!著者名はNATROM改め名取宏(なとり・ひろむ)です。

「生存率の上昇」と「死亡率の低下」は違います

■医師国家試験を解いてみよう。「がん検診の有効性を示す根拠はどれ?にて、『Wikipediaの「がん検診」にはbが正解であると書いてあるが…』とのブックマークコメントをenvsさんからいただきました。こうして疑問点について教えていただけることをたいへんに…

医師国家試験を解いてみよう。「がん検診の有効性を示す根拠はどれ?」

がん検診にまつわる誤解は根深く、医師でもけっこう間違えている人がいます。ただ、医師国家試験にがん検診が有効である根拠を問う問題が出題され、若い世代の医師はがん検診の疫学をより正確に理解しているものと思われます。厚生労働省のサイトに過去問が…

他人にアレルギー症状を起こさせる疾患「PATM(パトム)」は実在するか?

PATM(パトム)についての医学論文はほとんど存在しない 「PATM(パトム, People Allergic To Me)」と呼ばれる病気がある。本人には必ずしも症状はないが周囲の人に咳、くしゃみ、鼻水といったアレルギー症状を起こさせるとされる。典型的には、自分が電車…

臨床環境医の利益相反

たとえばの話、「日本高血圧学会」の学会窓口を、降圧薬を売っている製薬会社がやっていたら、いくらなんでもまずいと思うよね。少なくとも現在の常識から言えば論外。何が問題かというと、たとえば「この降圧薬の効果はそれほどでもなく、むしろ副作用のほ…

「子宮頸がんで人は殆ど死なない」のか?

喫煙の害を過小評価しようとしているのか、「肺がんで死ぬのは10万人に80人、約0.08%である。タバコが肺がん死を数倍増やすとしてもたかがしれている」といった主張を散見する。10万人に80人というのはおそらく、日本人男性の肺がん租死亡率からきている。…